英国最古のワインショップを率いる男、サイモン・ベリーに聞く
ロンドンのセント・ジェームズ・ストリート3番地にて創業以来、310年余りの歴史を誇る英国最古のワインショップ<ベリー・ブラザーズ&ラッド>。サイモン・ベリーは、その会長である。シャンパーニュ地方のモエ・エ・シャンドン、ボルドーのムートン・ロートシルト、ブルゴーニュ地方のプロスペル・モフーなど、フランスのワイン生産地で働いたのち、1977年に同社に入社した。
1979年にWSET(ワイン&スピリット・エデュケーション・トラスト)のディプロマを、1983年にブリティッシュ・インスティテュート・オブ・マーケティングのディプロマを授与されたベリーは、酒造業界の慈善団体であるカウンシル・オブ・ワイン&スピリッツ・トレード・ベネヴォラント・ソサエティ、中世のギルドに端を発するワイン醸造業者の組合であるウォーシップフル・カンパニー・オブ・ヴィントナーズ、そしてアカデミー・デュ・シャンパーニュのメンバーである。加えて、英国王室よりクラーク・オブ・ロイヤル・セラーを任命され、プリンス・オブ・ウェールズ(チャールズ皇太子)のワイン商であることを認める英国王室御用達許可証の持ち主でもある。
ベリーはオックスフォード大学やイートン・カレッジを始めとして、幅広く学会で講演するかたわら、国際的な出版物で健筆を振るい、テレビ・ラジオにも出演している。妻ルーシーとロンドンに在住。
個人としてのタイプ
それについては妻に聞くべきかもしれません。実のところ、私は非常に英国的な人間で、プライベートな暮らしぶりは保守的です。典型的な英国流のスーツを着ることが多い反面、新しいガジェットとかテクノロジーが大好きでしてね。総じて、いろいろなタイプをミックスした人間です。人は伝統的であると同時に革新的にもなり得ると思います。これでなければあれ、と決めつける必要はないでしょう。
インスピレーションの源私は演劇を愛しています。私には自分なりのスタイルがあって、多くの場合、演劇への情熱が私のスタイルに現れています。過去1年、王立演劇学校の役員を務めましたが、あれは魅力的で刺激的でした。私を招聘したのは、あの学校も伝統を非常に大切にする一方で、自分自身を失うことなしに変化していく方法を模索しているからだと思います。私たちが<ベリー>で成功裏に成し遂げたようにね。
避難所
イングランド南部のウィルトシャーに美しい家を持っています。週末は大抵そこでスイッチオフします。それに釣りもするのですが、こちらはうまく行きません! 最近夫婦で始めたのですが、いい趣味です。
日本のお気に入りスポット
妻と私は日本の熱烈なファンで、特に奈良が好きです。あの壮大なスケールのなかで歴史的に重要なものが見られる。なんとも壮観です。ホテルは平凡でしたが、奈良そのものは申し分のないところでした。
それから京都では<俵屋>に泊まりました。実に素晴らしかった。ただ、天井が低いので年中頭をぶつけたのには参りました。非常に伝統的な旅館ですが、長年京都に住んでいるアメリカ人がオーナーです。
身だしなみの習慣
わざわざ出かけて、人にひげを剃ってもらうのは性に合いません。結婚式のときに剃ってもらいましたが、あれ一回で充分です。数か月まえのこと、ロンドンに新しくオープンしたある場所へ妻に連れて行ってもらい、びっくりしました。ドクターフィッシュ――足の角質をついばんでくれる魚、あれには驚いた。毎週の習慣になるかどうかはわかりませんが、私の足がかつてなくきれいなのは確かです。
私どもの店があるセント・ジェームズ・ストリートから目と鼻の先のオールド・ボンド・ストリートに、<テイラー>という素晴らしい店があります。私は、そこのドーンという美しいレディに髪を切ってもらいます。ドーンはサッカーチーム、アーセナルのサポーターでしてね。私はチームが絶好調でないときを狙って店に行くようにしています。さもないと彼女の自慢話に耐えられなくなりますから! このヘアサロンにまつわる、とっておきのエピソードをお話しましょう。15年ほどまえ、まだeメールが登場するまえのこと、店のオーナー(“ミスター・テイラー”としておきます)と、ある日本のビジネスマンとのあいだで手紙のやりとりが始まりました。そのビジネスマンは、<テイラー>で扱う商品に興味があり、イングランドから輸入したいというのです。1年半ほど連絡を取り合って、日本紳士はロンドンにやって来ました。ミスター・テイラーと会い、最終的な契約書にサインを交わすために。ヘアサロンに足を運んだ紳士は、昔ながらの店内に入りました。20分ほどなかを案内されて、彼は礼儀正しくこうたずねました。「服はどこにありますか?」と。<テイラー>を洋服の仕立屋と勘違いしていたのです。しかしハッピーエンドでした。紳士は話を進め、シャンプーを日本に輸入することにしたのでね。このシャンプーはいまでも東京で手に入ります。
なしでは済まない贅沢品
iPadです。ファーストグロース(第1級)のクラレットとお答えすべきなのでしょうが、iPadが大好きなのは認めざるを得ません。
もっとも居心地のいい場所セント・ジェームズ・ストリートは私にとって精神的な故郷で、とても快適なオフィスを構えています。これだけ長い年月を過ごしたので、いっそここに住んでもいいと思うほどです!
もらったなかで最高のギフト
ドクターフィッシュのほかにですか? 実は、私はギフトについてはとても恵まれています。妻は、私自身が必要だと実感するまえに、私の欲しいものがわかるという素晴らしい才能の持ち主でね。5年ほどまえですが、ずっと望遠鏡が欲しかったと、ふともらしたことがありました。それから半年後、妻から私への誕生日プレゼントが望遠鏡でした。以来、月の観察に夢中です。日本では“月見”が重要な行事になっていますが、とてもいいことだと思います。私は最初、望遠鏡とは星を見るものだと思っていましたが、大きな宇宙望遠鏡でないかぎり、星は火花よりいくぶん明るい程度にしか見えないのです。私が心から驚嘆し、絶えず魅了されるのは月です。
お気に入りのウェブサイトとアプリ
私どものウェブサイトを別にすれば、ワインのウェブサイト上のフォーラムを見る時間が圧倒的に長いでしょう。ロバート・パーカーのものはとてもいいし、ジャンシス・ロビンソンのは魅力的です。どのフォーラムも相手に対して礼儀正しいですね。ukwineforumというのも悪くない。ワインに関して世の中の考えや話題を知りたいと思えば、ぜひフォーラムを見るべきです。ちょっとソープオペラ的なときもあるし、参加者に実際にお会いするといささかショックを受けることもありますがね!
今、気に入っているアプリは――サッカーチーム、チェルシーのものは別格として(こう見えて、シーズンチケットを持っているんですよ)――Word Lensです。iPadのカメラレンズを英語で書かれた標識なり言葉に向けるだけで、自動的にスペイン語に翻訳してくれるのです。スペインに行くことはないので、私にはまるで意味がないのですが、すごく楽しいのでつい何度もリンクしてしまいます。
好きな食べ物
大好物はステーキとキドニープディングです。私の地元のパブが供しているのが最高、バーコムという村にある<ザ・シップ>という店です。
Twitter派ですか?
まったく私向きではないですね。友人のスティーヴン・フライは筋金入りのファンで、これは将来も残ると請け合うのですが、私にはわかりません。<ベリー>にもTwitterをやっている人はいるし、私もアカウントは持っています。70名ほどフォローしてくれているのですが、すごく退屈しているに違いありません!





