歴史的な河岸通り、復活を果たす
19世紀後半から20世紀初頭にかけての全盛期には『東洋のパリ』と異名を誇った上海。数十年も放置されたままだったその上海が、劇的な復活を遂げつつある。世界屈指の巨大都市に変貌を遂げようとしている活気溢れる大都市。外灘(ワイタン――英語名:バンド)はその中心にあって、石造りの壮大なネオクラシック建物と、19世紀フランス様式の建物が建ち並ぶ、堤防で囲まれた全長1.5kmほどの河岸地域である。
これらの建物はかつての国際的な銀行や貿易会社で、往時は我が本社こそ河岸沿いでもっとも立派な建物なりと、覇を競ったものだった。2010年万国博覧会を機に、官民がそろって前例を見ない資金を投じて復興を成し遂げ、このおかげでこうした建築物は現代の上海でもっとも印象的なシンボルになった。

Salon De Ville
歴史、著名人、モダンシック
12階建てのキャセイ・ホテル。その黄金期は極東でも屈指の豪華なホテルとして1930年代から40年代に人気を博し、1950年代にはピース・ホテルとして名をはせた。持ち主のサー・ヴィクター・サスーンが、キャセイ・ボールルームで繰り広げたクレージーなパーティーは今でも語りぐさになっている。チャーリー・チャプリンや、俳優にして脚本家のノエル・カワード(キャセイ・スイートで『私生活』を書いた)のお気に入りだったこのホテルは、このたび3年がかりの修復がなり、フェアモント・ピース・ホテルとして登場した。

Local expert Spencer Dodington in Shanghai
10階の全フロアを占めるペントハウス、サスーン プレジデンシャル スイートは黄浦江の壮観を臨み、大理石の広々したバスルームには猫足形のバスタブが備わる。このホテルに昔からある<ジャズクラブ>は有名で、市中で一番を争う人気スポットのひとつだ。
その隣にあるのがスウォッチ・アート・ピース・ホテル。ピース・ホテルの南棟を占めていた旧パレス・ホテルの生まれ変わりだ。ここは歴史的に重要なイベントの舞台としても有名で、世界に蔓延していた麻薬問題を話し合う最初の国際会議である、1909年の国際アヘン委員会もこのホテルで開かれた。
スウォッチ・アート・ピース・ホテルは興味深いさまざまな要素が渾然一体となったホテルだ。館内には現代デザインセンターがあり、現代アートに触発されたゲストスイートは7部屋。インテリアはジュアン・マンクが手がけた。今年後半にオープン予定の同スイートは、「ラグジュアリー」の意味を再定義するデザインが施されている。

Long Bar
真に洗練された装飾様式となると、ウォルドルフ・アストリア上海オン・ザ・バンドに敵うところはない。同ホテルは、河岸に面したなかでももっともオリジナルに忠実に修復された建物として広く認められている。1911年に市内でもっとも高級なジェントルマンズクラブ、上海クラブとして開業し、エレガントなイングリッシュ・ルネッサンス様式の本部と、伝説的な約34メートルもある<ロング・バー>により名声を欲しいままにした。客室数は269。スイートルームは現代的なタワーのなかにあり、このタワーは過去から継承した建物(こちらは全室スイート)と繋がっている。豪華絢爛なヨーロッパデザインと、現代的な感覚とのコンビネーションを高らかに謳い上げるホテルだ。上海に精通したコンシエルジュサービスも一流。
外灘を南に下った、ウォーターハウス・アット・サウスバンドはデザイナーズホテルと最先端のスタイルを高度な創作力でブレンドして完成した。歴史ある十六鋪埠頭地区に打ち捨てられていた工業倉庫が、上海をベースとする有名な建築事務所ネリ&フ・デザイン・リサーチ・オフィスによって、目を見張るほどモダンな客室数19の、都会の隠れ家へと一変した。内と外の空間、パブリックとプライベートエリアの境界をぼやかすという建築家の斬新な試みに身を委ねてみよう。3階吹き抜きのロビーは鉄骨の柱、露出したレンガ、建設当時の打ちっぱなしのコンクリートからなる素晴らしいコンビネーション。とどめはデザイナー家具・インテリアメーカーのムーイ社のためにスタジオ・ヨブがデザインしたペーパーシャンデリアだ。

Waldorf Astoria Club facade
ミシュランの星こそ獲得していないが、上海はグルメを満足させる実力派の店が軒を連ねている。しかしここでも目指すべきは外灘だ。朝食が絶品の<Mオン・ザ・バンド>や、秀逸なフレンチを供する<ジャン・ジョルジュ>など、名の通ったレストランが目白押し。一方、最近参入したレストランは、ダイニングシーンに旋風を巻き起こそうとしている。
もっとも最近オープンした店は、シックなスウォッチ・アート・ピース・ホテル内にある。その名もふさわしく、<ショック!>。シンガポール経由のインターナショナルなダイニング・コンセプトを具体的な料理にして供する。率いるのは英国出身のケビン・ケープ。ロンドンのコンノート・ホテルにて、ミッシェル・ブルダンの元で腕を磨き、豪華列車イースタン&オリエンタル・エクスプレスのエグゼクティブ・シェフを務めた。エビを炒めてホットマヨネーズとあえ、上から蜂蜜がけしたクルミを散らした一品をお試しあれ。
このレストランのワインセラーは、ボルドーのなかでももっとも有名なふたつのシャトー、シャトー・シュヴァル・ブランとシャトー・デュケムのレアなコレクションを床から天井までずらりと並べており、1945年から始まり2008年にいたるヴィンテージものも揃っている。
スウォッチ・アート・ピース・ホテルのルーフ・テラスガーデンからは街のパノラマが見渡せる、ぜひとも行きたい場所。ここのドームつきタワーの内部には、ロマンチックなディナーを楽しみたい人にふさわしい、くつろぎのダイニングスペースが用意されている。

Waldorf Suite bedroom and reading area
ザ・ウォーターハウスにあるインダストリアル・シックなダイニングバー、<テーブルNo.1>はトラベル + レジャー 2011 アニュアル デザイン アワードのベスト・レストラン賞を始めとする数々の賞を受賞しており、1時間以内でサーブされるエクスプレス・スリーコース・セット・ミールは忙しい買い物客にはもってこいのメニューだ。
その一方で、ウォルドルフ・アストリアの<ロング・バー>では、伝統的な魅力がすべて昔のままに保たれている。ゲストのテーブル脇で、格好良くミックスしてくれるオーソドックスなマティーニ、シックなオイスターバー、完璧に再現されたウォルドルフ・サラダはその一例。エレガントなロビーの奥にある<ペラムズ>は、ヒヨコ豆添え和牛ニューヨークや、スイスチャード添えチミチュッリソースに代表される、ニューヨークの人気メニューとモダンなアメリカ料理を提供する。また、エレガントな<サロン・ド・ヴィル>で供される、このホテル伝統のアフタヌーンティーは、レッドベルベット・カップケーキ中毒者なら必ずスケジュールに入れたい場所。このカップケーキは、一日がかりでショッピングした後の最高のごほうびだ。





