既成概念に挑む

by WIFM
Yohji Yamato

現在、ファッション界のカリスマで先駆的デザイナー、ヨウジヤマモトの展覧会がロンドンのビクトリア・アルバート美術館(V&A)で開催されている。京都の職人たちの生地を用いた彼の作品は、7月10日まで展示される予定だ。

Yohji Yamato 「生地こそがすべて」と、かつてヤマモトは語った。布への強いこだわり。これこそが、デザインを追求する彼の創作姿勢の核である。だぼだぼで、未完成にも見え、性別の概念を弄ぶような中性的な服、あるいはフェルトやネオプレンなど、普通ならおしゃれな衣装には使用しない生地に遊びを加えた服。1980年代初期、ヤマモトはこうした服をデザインすることで、ファッションの既成概念に挑み、世界的名声を博した。

ヤマモトの作品は、斬新なパターンカッティングやファッション史に対する造詣の深さに加えて、ユーモアのセンスも光る。黒を繰り返し巧みに使うのも彼の作品の特徴。本人によると、黒は「清楚と傲慢が同居した色」だという。

回顧展でもある今回の展覧会では、V&Aの館内外の空間を利用した一連の展示作品全体を通してヤマモトの軌跡をたどるかたわら、彼にとって初のメンズウェア・コレクションも紹介。一連の展示作品として構想されたエキシビション最大の目玉が特設サイトに設けられており、40年近くにわたる彼のキャリアを振り返り、その華々しい軌跡に焦点を当てている。

ヤマモトのコレクションで使用された生地は、京都や京都周辺の職人たちによって彼の注文通りにひとつひとつ丹念につくられたもの。これは、彼のデザインプロセスにおいて極めて重要な要素であり、今回すべての展示服をオープンディスプレイにしている要因はここにある。美術館に入ると、誘われるがままディスプレイの間を歩き、複雑できめ細やかな生地を間近でじっくりと観察できる。マネキンの中には、グループごとにアレンジされ、レイヤリングや両性具有的な美といった、彼の作品には欠かせないテーマを醸し出すものもある。 Yohji Yamato

主要展示会場では、過去のファッションショーやパフォーマンス映像、彼が衣装を手がけた映画、イラストや写真などを抜粋し、様々なメディアを組み合わせて時系列的にヤマモトの軌跡に迫っており、彼の幅広い創作の解釈に大きく役立っている。これまでにヤマモトは、異なる業界の人たちと数多くコラボレートしてきた。とりわけ、ニック・ナイト、パオロ・ロヴェルシ、クレイグ・マックディーンなど、いまや世界を代表するファッション・フォトグラファーとのコラボでは、アイコン的なファッションイメージを見事に造り出してみせた。V&Aでは、これらのイメージをフィーチャーしたカタログの一部をキャノンUKと組んで再公開しており、ビジターにとっては、そうしたイメージをつぶさに見て感じることができるとともに、そのアートディレクションやグラフィックデザインの芸術性をも堪能できる貴重な機会となっている。