東京アメリカンクラブがモダンな「第二の我が家」として生まれ変わる
改装に190億円を費やした20,420㎡の特 注設計の建物に、最新鋭の飲食施 設と娯楽施設を整備し、1月半ばにそ の洗練された真新しい扉を開いた東 京アメリカンクラブ(TAC)は、「良質」か ら「最高品質」の会員制社交クラブとして変化を遂げた。
今回の再開発の完成を心待ちにしていたのはシックに生 まれ変わった施設を楽しみにする3,300人超えるの会員だけ ではない。地域の他の会員制クラブも同様だ。TACの「ア ジア最高峰」としての見事な転換は、入れ替わりの激しい 顧客層と困難な経済環境に対応しようと奮闘する業界で 大きな注目を集めていたのだ。
TACには再開発と改装の歴史がある。1928年に有楽町
にオープンしたのち、まず1935年には文化交流促進を目的
に掲げる外務省認可の非営利組織として丸の内へ移転
した。次いで1954年には麻布台の土地を購入し、その後
1972年に再開発が行なわれるまで定期的に改装を繰り返
してきた。現在の再開発計画が始動したのは1997年。ス
ポーツやカジュアル、ファミリー向けのサービスに対する需
要が増える中、TACの老朽化した建物や古い設備では対
応しきれなくなったためだった。表面的な改装だけにとどま
らず、新たに設けられた厳しい耐震建築基準によって全
面的な再開発が否応なく推し進められることとなった。
幸いにも、世界的に有名な巨匠建築家シーザー・ペリ が、会員のために新たな「我が家」を創るというTACの理念 の神髄に共感してくれた。「世界有数の建築家の中からプ ロジェクトの主任建築士を選ぼうとしていたかなり初期の頃 のプレゼンで、(ペリは)家族一人一人に対応する巨大な家 の創造について心をこめて語ってくれました」と説明するの は、TAC再開発ディレクター、アリステア・ゴフだ。「当初 から、会員が求めるまさにそのとおりのデザインが得られる とわかっていました。単に美しくデザインされた建造物とい うだけでなく、利便性や機能性に加えて人々が使いたくな るような空間が生まれるのだと確信していたのです」
古いクラブハウスの取り壊しに8カ月、新たな建物と隣
接する豪華なコンドミニアム(再開発の提携企業、三菱
地所が所有)の建設には約2年を費やした。そして生まれた
のは石とガラスと木材でできた優雅な8階建てのクラブハウ
ス。個性的なガラスドームの天井が屋上にあるプールの
デッキを覆っている。東京タワーを臨む小高い場所に位置
するクラブハウスとコンドミニアムは13,228㎡の斜面の60%
を占めており、一連の造園されたテラスによって様々な景
色が楽しめ、クラブハウスが丘を「下って行く」ような感覚を
持たせる。
新たな施設にはファミリー向けとビジネス向けに別々のエ ントランスが設けられている。ファミリー向けの飲食施設は 「レインボー・カフェ」、「カフェ・メッド」、そして屋上の屋外 レストラン「スプラッシュ!」がある。より親密なディナーには ユニークな2つのダイニング・ブリッジや鉄板焼用のテーブ ル、シェフズ・テーブルまであるメインダイニング「デキャン ター」がおすすめだ。独特な舞台のような300㎡の中央ス ペースを持つ「ウィンター・ガーデン」には8メートル近い高さ を誇る全面窓があり、さらに和紙デザイナーの堀木エリ子 が天然の白い和紙を七色の糸で編みこんだ高さ10メートル の手製の「光壁」がディスプレイされた特徴的な壁で囲まれ ており、間違いなくこの「家」の中心だ。
「この構造は『立涌(たてわく)』というモチーフにインスピ レーションを受けています」と京都在住の堀木は語る。「これは伝統的な吉兆の文様で、湯気が立ち上って空中で渦 を巻く様子を表しています。幸せと繁栄の象徴です。交 差する2本の曲線がモチーフとなり、日本とアメリカとの交 流を表現しています」
建物全体におよぶ素材、模様、質感の継ぎ目ない融
合は、ペリの設計の特徴である緻密さを反映している。太
平(タイピン)で織られたペリ独自のカーペット模様や東京
在住のテキスタイルデザイナーの須藤玲子が手がけた革
新的な掛け布などが、強い個性と品性を感じさせる。また、
TACと日本人画家、篠田桃紅との長年にわたる交流もはっ
きりと窺える。2004年以来クラブの壁を飾り続ける、彼女
の最大クラスの作品「相聞(そうもん)」は、今はフォーマル
ロビーの最高の場所を占めている。一方ではペリがデザイ
ンし、メキシコのコロリネスが制作した抽象的モザイク壁画
が、地下1階のエントランスへと続くホールと3階の「デキャ
ンター」に目を引きつける光景を描き出す。
調度品はモダンとクラシックが融合したデザイン家具。 フィリップ・ニグロが陰陽にヒントを得たカラフルなパズルの ような「コンフルアンス」ソファ、人気デザイナーのエーロ・ サーリネンがデザインした椅子、そしてサーリネンがノール社 のためにデザインしたシェフズ・テーブルの上に載るジョー ジ・ネルソンの奇抜なバブル・ランプ。ファミリーには広々 とした図書室、風変わりで色鮮やかなプレイルーム、特設 のジャングルジム、ビリヤード台や卓球台、Wiiにプレイス テーションまで完備したお楽しみゾーンもある。6レーンのボ ウリングセンターでは最新鋭の設備が体験できる。この他 にもラグジュアリースパ、25メートルプール、スカッシュコート、 体育館、フィットネスセンターが備わっている。それぞれデ ザインの異なる7つの客室が新たに設けられ、アーチ形天 井とコンテンポラリーなシャンデリアに飾られた400人を収容 するダンスホールは早くも大きな関心を集めている。
屋外のテラスにも細心の注意が払われ、相馬ランドス ケープ計画研究所によるアメリカと日本の植物を取り混ぜ た環境に優しいテラスには、デドン社製の手編み家具が 配置されている。

US Ambassador John Roos, Tokyo American Club President Lance E. Lee, Mitsubishi Jisho Residence CEO Takao Yagihashi and Fred Clarke of architects Pelli Clarke Pelli at the ribbon-cutting ceremony on January 18 2011.
「朝はビジネスセンターで仕事をしたり友人と会ったりして、 学校が終わったら子どもたちを遊ばせに連れ水泳などの活 動に参加させ、夜にはここのレストランで夕食を取る自分を 想像できます」と語るのは女性グループの元会長であり長 年の会員でもあるベッツィ・ウィーデンマイヤー・ロジャースだ。 「今度は客室が作られたので、泊まることだってできるんで す。クラブハウスは新しい我が家になりそうです」。それなら ば目的は達成、ということだ。
シーザー・ペリ(84)は世界でも有数の高層ビルや、モダンで目を見張 るような建物を設計してきた。アルゼンチン生まれのペリは26歳でア メリカに移った。1991年にはアメリカ建築家協会により「もっとも影 響力の強い存命アメリカ人建築家10人の1人」と称賛された。ペリは 現在、コネチカット州ニューヘイヴンに住んでいる。
www.tokyoamericanclub.org





