固定観念を打ち破る

by Catherine Shaw
ザ・キャピトルホテル東急かつてのセレブホテルが地元のもてなしとモダンなデザインを取り入れる

ホテルを真に象徴的にする要素とはいっ たい何だろう?他のホテルが同じように、 あるいはより一層の努力を重ねてもな お名を上げられずにいる中で、即座に 認識されるあのなんとも言いがたい雰 囲気と、独特な「自我」。

外観からインテリアまで、優れたデザインは間違いなく特 徴的な役割を果たすが、よく知られた名前は初めこそ当然 ある程度の関心を集めるものの、いったん落ち着いて日々 の営業が始まると、デザインとその精神が大きな成功に結 びつくことは驚くほどまれである。

嬉しいことに、最近お披露目された「ザ・キャピトルホテ ル東急」はそうした固定観念を打ち破り、日本のもてなしの 心とコンテンポラリーなデザインが融合した新鮮な体験を 提供してくれる。1963年の東京オリンピックのために設計 された元のホテルを全面的に再開発したこの場所は、首 都の新たなシンボルとなりそうだ。

The Capitol Hotel Tokyu伝統的な日本らしいテーマをモダンに取り入れた独自の デザインでその名を馳せる日本人建築家、隈研吾は、象 徴的な東京のランドマークの再開発にまさしくふさわしい人 物だった。独特な日本建築と快適で優雅なインテリアを巧 妙に融合させ、スタイルとモダンなもてなしとの間に調和を 生み出したのだ。隈のキャピトルホテル東急はまぎれもなく モダンな建築物だが、日本の豊かな伝統と文化、そして首 相公邸に程近く、歴史的な日枝神社を見下ろす赤坂とい う場所にあって驚くほど静かな庭園風のたたずまいから大き なインスピレーションを受けている。

今回の設計についてWIFMに語る際、隈は彼自身深く 尊敬する建築家、吉田五十八の手による初期の設計を尊重することが重要だったと明かした。吉田が設計した旧 東京ヒルトンホテルは日本発の世界的チェーンのホテルで あり、その後1983年から再開発のため2006年に閉館するま ではキャピトル東急ホテルとして営業されていた。何十年も の間、このホテルは東京でもっとも高級なホテルとして知ら れ、ビートルズや3大テノールのプラシド・ドミンゴ、ホセ・ カレーラス、ルチアーノ・パヴァロッティといった世界的セ レブに愛された。

元のホテルは完全に取り壊され、個性的な敷地への新 たなアプローチと高層ビルが建設された。そして生まれたの が18階から上に251の広々とした客室を備え、5つのレスト ランとバー、5つの宴会場、2フロア分のフィットネスとスパ 施設(20メートルの室内プールも含む)を完備した、見事な 29階建ての建造物だ。ホテルのエントランスは、東京の 他のどの場所でも決して見られない。創建500年の日枝神 社と空間を共有している上に、石板に覆われたファサード が印象的な隈のデザインがエントランスに独特のセンスをも たらす。建造物は高層ビルかもしれないが、地上の雰囲 気はきわめてひっそりとしているのだ。

ロビーに入ると広がる高い天井は伝統的な神社建築を 現代風に解釈したもので、シンプルに日本の石材で縁取ら れたコンテンポラリーな水の庭園が建物を取り囲み、ラウ ンジとレストランスペースにくつろぎの背景を提供する。中 間色のインテリアと細部まで行き届いた家具が、洗練され た魅力をさらに高めている。

明らかに日本風なデザインにもかかわらず、隈は自分の 建築様式が特別日本風だとは思わない、とためらいもなく語 る。「基本的に自分はとてもニュートラルだと思います」と隈。 「建築は日本で学んだのですが、学んだのはモダニズムと 自然を尊重することだったと信じています。時には古いもの を取り入れることもありますが、そうするのはそれが周りの環 境にしっくりくるからです」

隈研吾東京に拠点を構える隈は、自身のスタイルがどちらかと いうと「場所との対話」だと言う。「常にその場所の『ゲニウ ス・ロキ(地霊)』を探します。インスピレーションは日本で はなく、場からくる。伝統的な日本の職人は、場の自然を 尊重するよう鍛えられます。私もその理念を踏襲したいと 思っています」

隈の特徴的なデザインでしばしば称賛される要素が、水 平性と透明性だ。ザ・キャピトルホテル東急では、そういっ た要素がロビーの天井に取り入れられている。自然光が 全面窓から注ぎこむ中に軒板が影を作る。全体を通してあ しらわれている石や木といった天然素材が、屋外の自然 環境のような雰囲気を醸し出しているのだ。

「常にその場所に合った素材を選ぶことが重要です」と隈 は説明する。「私は実際の現場で時間を過ごし、光が朝 から夜にかけてどのように変化していくのか見るのが好きで す。問題は建物をどう設計するかではなく、内と外の関係 をどう設計するかなのです。壁で空間を区切るのではなく、 しなやかな幕を使って建物と庭、そして森との融合を図りま す。この数年で東京には新しいホテルがいくつもできました が、庭園や池のあるところはほとんどありません。私は実 際に庭の存在を感じさせるホテルを作りたかった。ザ・キャ ピトルホテル東京はそういうホテルになったと思います」

客室にもこのテーマが生かされ、洗練された控え目なイ ンテリアには障子の間仕切りや日本人芸術家の作品が 置かれている。13室あるスイートのうち4室は5階に位置 し、伝統的な風景式庭園と日枝神社の気品溢れる景色 が楽しめる。最上階3フロアを占めるクラブフロアにはデ ラックスルームやエグゼクティブスイートが配置され、朝 食やシックなイブニングカクテルが供されるライブラリーラ ウンジもある。

ホテルのレストランといえばフレンチがメインというイメージ から脱却し、ザ・キャピトルホテル東急の目玉となる「水簾」 では鉄板焼き、寿司、そして繊細な会席料理を優雅な雰 囲気の中で味わえ、さらに宿泊客はホテルの庭園で伝統 的なお茶会を体験することもできる。他にも以前のホテル で人気だったレストランを再現した中華料理「星ヶ岡」、カ ジュアルなオールデイダイニング「ORIGAMI」、そして熟練 の技で作られたマティーニが早くも評判となっているレトロ シックな「ザ・キャピトルバー」が客をもてなす。

芸術の愛好家にも楽しみは多い。以前の建物に飾られ ていた日本の芸術作品の多くがそのまま新しいホテルに引 き継がれ、中には篠田桃紅が40代に完成させた代表作も 含まれる。その作品はロビーのショーケースに飾られ、ロビー の反対側にはなんと篠田が97歳のときに描いた新作が飾 られているのだ。

ザ・キャピトルホテル東急
東京都千代田区永田町二丁目10番地3号
Tel: 03-3503-0109
www.capitolhoteltokyu.com