美しく生まれ変わった羽田から旅に出る

by Catherine Shaw
美しく生まれ変わった羽田から旅に出る 建築家光井純氏が、アジアで最もスタイリッシュな空港を生んだインスピレーションについてWIFMに語る

普段、好きなデザインや文化的環境スポットの必見リストの上位に空港が来ることはない。なぜなら多くの旅行者にとって、空港は退屈だが通過せざるを得ない場所に過ぎないからだ。しかし、先ごろ開港した東京国際空港(通称羽田空港)新ターミナルはそれを変えようとしている。美しくデザインされた最先端の空港ターミナルビルは、多忙な旅行者の心にも建築デザインファンの心にも同様に訴えかけること間違いなしだ。

東京駅からわずか15キロ、東京モノレールおよび京急空港線直通の羽田空港は、首都からの素早い脱出にこの上なく便利な立地だ。中に入れば、15万4000平方メートルの床面積が驚くほど効率的に活用されている。主要地点間の便利で機能的な移動から魅力的な商業・サービス施設の充実まで、利用客のニーズに細心の注意が払われたことは疑う余地がない。しかし多くの利用客にとっては、旅人を歓迎するべく日本独特の体験を積極的に取り入れた判断こそが真の魅力なのだ。

Haneda Exterior「今、特に中国で多くの新空港建設が相次いでいます。ですから何か日本を独特な自然環境や四季、もてなしの心、文化などを代表するようなものを創り出すことが大事でした。」と語るのは、自らが代表を務める建築事務所がコンソーシアムの一環としてターミナルの建築設計を担当した建築家、光井純氏だ。

「羽田はコ ンパクトな空港です。加えてその効率の良さも非常に日本的なものなので、それを念頭に置いて設計することが我々にとっては重要でした。また、友人を迎える家のように感じられる場所でもあり、日本がどういう場所なのか、その独特のもてなしの心を反映する場所も作りたかったのです。」

この慎重な検討の結果、生まれたのが日本の自然環境、特に水を称賛する繊細なデザイン要素のスマートなコンビネーションだ。たとえば、三階の出発ロビーは明るく広い空間で、印象的な天井は日本の冬に良く見られる、(光井氏が「筋雲」と呼ぶ)高い空を覆う薄い雲越しに光が差しこむ様子を思わせる。床は海を表すコバルトブルーだ。「古代日本は『瑞穂国』(瑞々しい稲穂と水の国)と呼ばれていました。そんな日本の特徴を光が表すと考えたのです」。光井氏はWIFMにこう語った。

Haneda Interior1階下の到着ロビーもH2O、つまり水の象徴がふんだんに使われている。たとえば、世界的に有名な日本画家、千住博が水にインスピレーションを得て描いた見事な作品が、目につく主要な場所に配置されている。特に目を引くのが、角度によって異なる景色を見せてくれる巨大な滝の絵だ。入館ブリッジのそれぞれの入り口にも霧や雨、霞など、水の様々な状態を表した同じ画家の手による作品が飾られている。

この他、カーペットまでが日本風に施されている。光井氏によれば、遠くから見ると到着ロビーの床に敷かれた桜色のカーペットは単純な柄模様に見えるが、近くでじっくり見ると、ひらひらと地面に舞い落ちる桜の花びらがゆるやかに回転する様子から生まれた複雑な花びらの模様が浮かび上がる。「こうしたディテールの背後にひそむもてなしの心は、とても日本的なものです」と光井氏。「あらゆる形の背景にはデザインと象徴の物語があるのです。たとえば、瓦を並べるという行為は『日本』ではありません。それは直接的過ぎる。『おくゆかし』くないのです。」

光井氏はさらに、「旅行者がデザインの裏に隠れた意味を理解し、その機能も評価してくれることを願っていた」と語る。「ディテールのひとつひとつに物語があるのです。荷物の受取所でさえ、夏の新緑などの複雑な模様が施された鮮やかな緑色です。これは荷物の受取エリアにしてはとても珍しいことです。この国には様々な季節があり、それが日本の美しさのひとつでもあります。ですがそれをあからさまな方法ではなく、隠喩的に表したいと思いました。廊下の突き当たりに大きな窓も設置しました。晴れた日には直接富士山が見えます。また、富士山の曲線の一部からインスピレーションを得て、その独特な自然の曲線を用いてターミナルビルの特徴ある屋根のデザインを考案しました。人々がそれを見て、自分たちは今、日本にいるのだと実感してくれればいいと思います。」