
photo by Robert Gilhooly
ソウルのダウンタウンにある梨泰院(イテウォン)地区。かつてここに軒を連ねていた薄汚い低俗店は一掃され、今や地元民も観光客も訪れるシックな街並みに姿を変えた。裸の女が呼びもののバー ――目と鼻の先の龍山基地から繰り出した米軍兵士が起こすけんか騒ぎが絶えなかった ―― が建っていた土地はブルドーザーが整備して高級レストランに代わり、みすぼらしい小間物屋はパリ風のカフェに代わった。
イテウォンのナイトライフは消えてしまったわけではない ―― 進化したのだ。

photo by Robert Gilhooly
インペリアル・パレス・ブティックホテルはよく目立つ。昼間、建物の正面は黄色、ブルー、レッドが錯綜する無数の明るい色のパネルで飾り立てられ、夜には上品なネオンが灯る。ロビーも同じように明るい。一続きの折れ曲がった鏡、天井からロープで吊されたグリーンのブランコ、背もたれの高いベルベットのソファなどが相まって、さながら『不思議の国のアリス』の1シーンを見ているようだ。またエレベーター周辺の装飾は、大型の錠とストラップのついたクラッシックなスーツケースを再現している。
客室は全132部屋、それぞれ趣向を凝らしたインテリアがしつらえられており、インターネットとiPodステーションが無料で接続できるだけでなく、バスルームにはブルガリのソープとシャンプーが用意されている。宴会場、ジム、ビジネスセンターに加え、屋上プールとレストランなど館内施設も多彩だ。そして<カフェアミーガ>は両脇に並木が立つ大通りを見渡せる完璧なスポットだ。
実はイテウォン地区をルネッサンスに導いたのは、一気に数を増したこうしたカフェなのである。ホテルから少し歩いた距離にあるのが<Spiro Luca>。イタリアンアートのディスプレイスペースで、ここに付随するレストランとバーは歩道にまで広がっている。<Between>は、クロームとガラス張りのスタイリッシュなラウンジバーで、やはり正面が街路に向かって開いている。それに<Between>は6月初旬にオープンしたばかりだが、早くも食事が素晴らしいとの評判を得ており ―― タパスのメニューはオーセンティックな逸品ぞろい ―― お酒の種類が多いことでも群を抜いている。

photo by Robert Gilhooly
また一方で本物の家具は、数軒先の<Royal Antique(ロイヤルアンティーク)>で手に入る。1世紀以上前に裕福な韓国の邸宅を飾ったであろう家具が取りそろえてある。言うまでもなく、値段は古さと過ぎし日の職人の妙技に比例する。
丘を降り、イテウォン地下鉄駅(2002年完成)を通り過ぎると、裏通りには飲み屋や、食べ物の屋台、観光客相手の店が多数軒を連ねる。しかしこうした店も新興勢力である、カルバンクライン、アディダス、ノースフェイス、ナイキ、コールド・ストーン・クリーマリー、リーボックなどのブランドショップと、おびただしい数のしゃれたコーヒーショップにどんどん押し出されつつある。
イテウォンのナイトライフは消えてしまったわけではない ―― 進化したのだ。

photo by Robert Gilhooly
ダイニングラウンジ<Bliss>は通りに面した角地という一等地にあり、サーモンステーキ、フンギリゾット、生ハムピザなどヨーロッパスタイルを取り混ぜたフードを一段高いテラスで供する。2階の<Buddha’s Belly>はタイ料理を、最上階はイスラム教徒のためのハラル・レストランだ。隣の建物は韓国焼き肉の店<Guga Galbi>、2階は日本から進出した居酒屋<En>がある。
<At First Sight>は高級なカクテルラウンジ、その隣はトラットリア<Cucina Acca>、さらにその上階は<Copa Cabana Brazilian Steak House>になっている。
私は<Gecko’s Boni>の正面テラス席に座っている。Gecko’sがイテウォンに出した3番目の店で、<Gecko’s Terrace>は<Gecko’s Garden>同様、見るからに流行っている。目の前を様々な人が通り過ぎてゆくが、格好のいい韓国の若者のなかには、ナショナルチームのけばけばしいユニフォームを着たサッカーファンが混ざっている。飛び抜けて背の高い、スレンダーなブロンド女性のグループが、騒々しい声を上げながら気取って歩いて行く。彼女たちが、この国で成長しつつあるファッションシーンの一部であるのは間違いない。その後から困った顔をしたロシア人ファミリーが続く。
このバーには、エディガー・ヴァイスブラウや、パウラナー・ミュンヘンを始めとする、素晴らしいビールのセレクションがある。しかし試す価値のある店はここだけではない。隣の<My Chelsea Brunch>はニューヨークスタイルのダイニングプレース。サルサを大音量で流しているラテンバー<Loco Loca>では、華やかなシャンデリアの下でマルゲリータを出してくれる。<Zelen>はブルガリア料理の店だ。
地元の人のお気に入りが<Le Saint-Ex>、オーセンティックなフランス流バー・ビストロで、ここで食事をすると地球の裏側にワープした気分になる。ワインリストはおもわず唸ってしまうほど長く、コルク抜きのそばに立つスタッフは一点のシミもない、丈の長い白いエプロンをして、壁の至るところにフランス原産のアルコール飲料ペルノーの広告プレートが飾ってあるといった具合だ。
<The Scrooge>、<The Dickens Lounge>、<The Baby Guinness Bar>、<Sam Ryan’s Sports Bar>のあるイテウォンは、イギリスのパブファンとアメリカのスポーツバーファンもおろそかにしていない。
だがこれだけのエンタテイメントが揃っていながら、イテウォンには文化的な魅力がまだ相当足りないと指摘する批評家がいるかもしれない。ところがそうでもないのだ。サムスン美術館は定期的に展示品を入れ替えているほか、韓国の古美術と現代美術の素晴らしいコレクションを常時展示している。
サムスン美術館は、変貌著しいイテウォンにいまだ残る過去のイメージを粉砕するとどめの一撃なのかもしれない。
泊まる:
インペリアル・パラス・ブティックホテル
ソウル市竜山区漢南洞737-32
Tel: 82-2-6266-8000
www.ipboutiquehotel.com
カルチャー:
サムスン美術館リウム
ソウル市 龍山区漢南洞747-18
Tel. 82-2-2014-6901
http://leeum.samsungfoundation.org
ロイヤルアンティーク
ソウル市竜山区漢南洞 736-9
Tel: 82-2-797-8637
www.royal-antique.com/intro.php
食べる:
Between
ソウル市竜山区漢南洞124-7
Tel: 82-2-795-6164
Bliss
ソウル市龍山区梨泰院洞119-7
Tel: 82-2-798-1125
www.blisslounge.co.kr
Gecko’s Bonji
ソウル市龍山区梨泰院洞116-7
Tel: 82-2-795-9656
www.geckosterrace.com
Le Saint-Ex
ソウル市龍山区梨泰院洞119-28
Tel: 82-2-795-2465
www.lesaintex.com
Sources: For more information on photojournalist Robert Gilhooly, please see: www.japanphotojournalist.com





