ビジネスに多様性をもたらすのは女性

by Alana Bonzi
ビジネスに多様性をもたらすのは女性成功のチャンスを作れば才能の持ち主はついてくる

様々な人材で構成されるグ ループの方が、均一な人材 で構成されるグループよりも 優れている。これは、調査 で明らかになっている事実 だ。分析力、問題の解決力、さらには、イノベーティ ブな着想という点でも優れている。大手外資系の 会計事務所、アーンスト・アンド・ヤングが新たに 始めた“グラウンドブレーカー(改革者)”と称す る取り組みも、こうした考察の結果に立脚している。 同社グローバル担当副会長のベス・ブルック氏がこ の3月に東京を訪れて、“グラウンドブレーカー”が もたらした成果を語ってくれた。

ブルック氏によれば、最近の経済状勢はグローバ ルな物の見方を必要としている。そしてグローバル な物の見方を生み出す一つの方法が「多様性(ダイ バーシティ)」に投資する事であり、もう少し正確に 言うなら、物事を大局的な見地から見通せる多様な 人材に投資することだ、と言う。多様性とは、すな わち人が変われば、見方も変わるということ。ブルッ ク氏にとっての多様性とは次のようだ。異なる人生 経験や将来の展開性を持つ中で、 自分とは異なる 外見、思考、行動をする。これまでの人生で得た 経験が異なれば、他人と違う大局的な見地から問題 やリスクを把握するものだ。今やこれこそが、ビジ ネスで成功する基礎的条件となっている、とブルッ ク氏は言う。多様性を備えていれば、状況をより包 括的に描くことができる。多様性が成功するための 戦略として、数学的な事実からも見る事ができる。 ミシガン大学アナーバー校で複雑系を研究している スコット・ペイジ教授は、自身の多様性予測定理の 中で、次のように言っている。「総合グループの集 合的な能力は、グループを構成するメンバーの平均 値に多様性が加算される」。

しかし、ここには注意すべき点がいくつかある。 問題解決には、まず賢明な頭脳の持ち主でなければ ならない(単なるIQではなく、人とは異なる種類の 知力を発揮する必要がある)。しかも難問を把握す るのに、人とは違う方法をとることが求められる。

article_201003_16女性が世界人口の半分強を占めている以上、女 性が政治、社会、経済、そして企業に多様性を注 入する、手近な集団であるというのは、もっともな 理屈である。

今こそ、それを立証する時のようだ。

女性は、既存のシステムから脱却する必要性を 喚起しているように思える。それに、どうやら男性中 心のネットワークも、新しい考え方が必要だと気づ いているようだ。今年1月、スイスのダボスで開催 された世界経済フォーラムにて、なぜ性別の問題が CEOたちの検討課題になったのかは、これで説明が つく。ブルック氏によると、世界中の企業経営トッ プは女性である、という新興成長市場のニーズを討 議し、理解するのにかなりの時間を費やしたそうだ。 彼らは、女性を才能の持ち主、顧客、決定権の持 ち主、という観点から考察した。才能、職場、性別 によって、社会に対する影響力に格差が出ることが、 その場で明らかになった。ゴールドマンサックスは、 この点に関して、2007年4月に出した『Economics Paper No. 154—Gender Inequality, Growth and Global Ageing(ジェンダーによる不平等、 成長と地球規模の老化現象)』でこう述べている。 「男女間の就業率の格差を縮めることは、世界経済 に非常に大きな影響を及ぼし、各国のGDPを押し上 げることになるだろ。米国では9%余り、ユーロ圏 では13%、日本では16%、それぞれのGDPが上が ることになる。女性が労働市場に進出するのを奨励 する事こそ、ユーロ圏の労働市場を成功へと導く唯 一最大の推進力なのである。その効力は、従来の労 働市場を改革する事より、はるかに有効なのである。 米国と日本については、スタートポイントが異なって いたとはいえ、両国共に、この10年間で男女間の 雇用格差を縮める事は、ほとんどできなかった」。

“米国と日本については、スタートポイントが異なっていたとはいえ、両国共に、 この10年間で男女間の雇用格差を縮める事は、ほとんどできなかった。”


日本では手本となる女性がほとんどおらず、政策 面からの支援も乏しく、社会的なセーフティーネット も疎かにされている。そのため、経済を形成してい く上での女性の意見やインパクトは非常に弱いもの である。多くの企業は、女性をビジネスのターゲッ ト市場か、あるいは非正規雇用者要員と見なしてい る。顧客としての女性は、ブランドや会社を築き上 げたり、破壊したりできるほどの力を持っている。し かし、役員室の中となると、話は別だ。理想を言う ならば、リスクを認識する日本女性と、リスクを回 避しようとする男性が共同作業すれば、新しいビジ ネス環境で意思決定を下すのに求められる、幅の 広い思考プロセスを作り出すことができるのだろう。 しかし、現実にそんなことは起こりえないし、起こ りえないのは日本だけではない。

格差を縮めるのを阻む、強力な文化的バリアが3 つある。国、企業、そして家族というバリアだ。こ の中で一番変えやすいのは企業文化だ。“グラウン ドブレーカー”プログラムも企業文化の変革を目指 す。そのために、女性社員にグローバールリーダー の育成を目指し、キャリア形成の早い段階で適切な 経験を積ませるパイプラインを作れる。グローバー ルリーダーは、積極的に多様な考え方を取り入れ る。そのために、わざと議論を巻き起こして、 安全 な環境を作り出し、異なる考えを述べてもらうのだ。 また、グローバールリーダーは、素晴らしい聞き手 だ。彼女らは次なる大きな課題を予見したうえで、 様々な異なる考え方によるレバレッジ効果を見極め る。グローバールリーダーは、幅広い範囲で才能 ある人材を育むとともに、自分自身が他人を見る時、 あるいは他人の意見を考察する時、レンズを通して ある種の偏見を見ていないか、と考えるのである。 彼女らは物の見方を養い、会議中に誰もが押し黙っ てしまった瞬間、流れを大きく変えるだけのリーダー シップを持つ社員に注目する。グローバールリー ダーが注目するのは、あくまでも結果、プロセスで はない。

新しいグローバルなビジネス環境において重要視 されるのは、企業が世界に対してどのような価値を 持ち、世界の中で何が出来るかである。この事こ そが、才能の持ち主を引きつけ、企業に繫ぎ止め るカギとなる。自分の意見と異なる意見を気持ちよ く受け入れられる才能。成熟市場と発展途上市場 の双方を理解できる才能。競争の中での協力関係 をうまく築き上げられる才能。このような才能の持ち 主は、どこにでも平等に割り振られているのは良い ニュースでしょう、とブルック氏はいう。しかし、成 功を掴むチャンスは平等ではない。だからこそ、チャ ンスを作り出そう。そうすれば、才能ある人はつい てくるのだ。