GREEN Machines

by Julian Ryall
wifm_autumn09_low-81グリーンマシン:地球を救う自動車と飛行機の革新技術

大気中に汚染物質を排出する 元凶として、運輸産業は長 いあいだ厳しい批判に耐え てきた。日本の場合、運輸 部門の二酸化炭素排出量が 全体の20パーセントを占め、排出規制が甘い開発 途上国だと、この数字ははるかに大きくなるという 研究結果がある。

しかし自由に移動したり、物資を運搬したりする のは人間にとって基本的なニーズであり、その必要 性は日々高まりつつある点は差し引いて考えるべき だろう。

世界が環境破綻に向かってまっしぐらに進んでい ることに気づき、危機的状況を回避すべく努力を している企業や組織が次々と現れているのは喜ば しいことだ。

こうした企業のふたつ、ベタープレイス・ジャパ ンとヴァージン アトランティック航空の代表が、在 日アメリカ商工会議所主催のシンポジウムに参加 し、来るべき将来のトレンドと、低炭素社会を実現 しようという努力からどんなビジネスチャンスが浮か び上がるかを検証した。 wifm_autumn09_low-85

「世界は一層エコフレンドリーになり、環境問題に 敏感になっています。その結果として、人々は地球 環境を大切にしているという姿勢を表明できるよう な製品・サービスを求めるようになりました」。こう 語るのは藤井清孝さん。ベタープレイスの日本・ア ジア太平洋地区代表であり、日本法人社長である。

日本の革新的な自動車メーカーは“グリーンな”ク ルマ作りに大いなる努力とリソースを注ぎ込み、目覚ましい進歩を遂げてきた。その一方で、価格が 十分こなれて、しかも妥当な航続距離を走れるだけ のバッテリーを生産するには、基本的な部分での技 術的な問題が解決されていない。これが電気自動車 (EV)が広く採用される阻害要因になっている。「一 般大衆が電気自動車に乗るようになることが不可欠 だというのが私たちの主張です。市内路線バス、 郵便局、自治体などで導入しただけではなかなか効 果が出ないでしょう」と藤井さんは語る。「EVは大衆 に普及しなければ意味がないのです」。

しかし価格というハードルも克服しなければEVの 普及はおぼつかない。ところが現在、EVは300万 円前後と高価で、その3分の1を占めるのがバッテ リーのコストである。なおかつユーザーには航続距 離の問題がついて回る。バッテリーが電気を供給で きるのは100キロまで、そこから先はいつ止まるか 冷や冷やしながら走ることになるのだ。

ベタープレイスの取り組みが革命的なのはこの部 分である。


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2007年、アメリカで創業したベタープレイスの ビジネスモデルは、バッテリー充電スポット、バッ テリー交換ステーション、バッテリー交換作業を自 動化するソフトウェアの3点を提供することでゼロエ ミッションカーが求める条件を満たした。

充電スポットは電力から充電するので、100 キロまで走るエネルギーは常に確保できる。 オフィスのパーキングロットの横に置いてもいいし、 店舗わきや自宅に置いてもいい。クルマにプラグ を差すだけだ。

100キロを超えるドライブ用には、道路わきに交 換ステーションを設置することになる。交換作業は 完全に自動化され、ドライバーはクルマから降りる 必要すらない。

EVは、自宅で夜間に充電される場合が多いだろ うから、太陽光発電や風力発電など再生可能なエ ネルギー源から得た電力で充電することができる。 今年初め、横浜でこのシステムの実証試験が行 われ、イスラエルはこのテクノロジーをまるごと取り 入れた最初の国になった。



エアラインビジネスも環境を保全する変革に取り 組んでいる運輸部門のひとつだ。航空会社はいま でも大きな汚染物質排出源のひとつだが、ヴァージ ン アトランティック航空は先頭に立って変革の舵を 取る。ヴァージン アトランティック航空の日本支社 長を務めるポール・サンズさんは次のように語る。



「経済への貢献度という点で、航空会社の働きは 悪くないと思います。世界のGDPの8パーセントを 占めていますし、世界各地で2900万人を雇用して いるのですから。社会面で言うなら、人々を結びつ け、文化の理解を深める一端を担っています。ただ 環境面では、他産業との隔たりがあります」。

IATA(国際航空運送協会)は2050年までに汚染物質排出量を半分にカットする目標を掲げる一 方、航空機の排出量に関する世間の認識と実際の 数値とのギャップを埋めるのに懸命だ。一般の人々 は、航空機からの排出量は全体の実に80パーセン トを占めると思いこんでいるという研究結果がイギ リスで出ているが、実際の数字は3.5〜5パーセン トなのである。

ヴァージンは排出量をさらに削っています、とサン ズさんは言う。最初のステップは可能な限りの効率 化を追求すること。もっとも効率の高い航空機を購 入することから始まり、離陸前に空きビンを降ろす など、余計な物を運ぶエネルギーロスを徹底的に削 ることまで、排出量軽減の追求はすべてにあてはま る。ちなみに効率の高い航空機の有力候補はボーイ ング・ドリームライナーで、従来機より燃費が25パー セントも優れている。

乗務員や乗客もヴァージンが目標を達成するのに 一役買っている。機内サービスで、フェアトレード のお茶とコーヒーを提供している唯一の航空会社が ヴァージンであり、本社ではペーパータオルに代わ り、温風ハンドドライヤーが使われている。

しかしサンズさんは、もっとも大きな効果を期待 できるのは研究・開発が進むバイオ燃料だろうと考えている 「ヴァージンは、一部ながらバイオ燃料を使って 旅客機を飛ばした世界最初の航空会社です。こうい うことができるというデモフライトでした。ある程度 の高度を超えるとエンジンが凍結して、詰まるので はとの懸念があったのですが、4基あるエンジンの 1基にココナッツから抽出したバイオ燃料を使ってロ ンドン・アムステルダム間を飛びました。結果は上々 でした」と胸を張る。

再生可能な資源から新たな航空燃料を生産する にはまだまだ研究が必要だと認めながら、サンズさ んはこう続ける。「現在の燃料に取って代わる新しい 燃料はきっと長期的なソリューションになるでしょう。 まだ先の道のりは長いかも知れませんが、私たちが きっかけを作ったことは間違いないでしょう」。 シンポジウムに参加したスピーカーの中にはエ コフレンドリーな設計と製造方法に着目した意見も あった。彼らは、既存の自動車技術を発展させるこ とに焦点を当て、将来は数種類のテクノロジー、つ まり電気自動車、ハイブリッドカー、水素自動車が 共存できるだろうと主張する。

強い意志をもてば、サスティナブルな未来という 大きなゴールの達成は可能だと主張したのは、元横 浜市市長の中田 宏さんだ。2002年4月に横浜市 長就任して以来、7年にわたる在任中に、市の負債 を1兆円減らした人物。しかし中田さんが残したもっ とも大きな遺産は、横浜市民が出すゴミの量を減ら し、その収集と焼却に要した作業とエネルギーを軽 減したことだと言っていいだろう。 「皆さんが便利さばかりに力点を置いていること にすぐ気づきました。それに市役所の電気代が莫 大な額になっていることもですね。なにしろエアコ ンをつけっぱなしなのですから」と中田さんは語る。 「そこで“クールビズ”キャンペーンを始めました。 気候に合った服装をすれば、涼しく過ごせるものな のです」。

官僚から頑強に反対され、懐疑的な態度を取られ ながらも、中田さんが押し切って改革を進めたのが ゴミの分別収集である。ビン(ガラスビンとペットボ トル)、カン、新聞、ボール紙といった具合にゴミ を15種類に分類し、365万の横浜市民を指導する 2カ年計画にも着手した。 周囲の懸念を吹き飛ばすように、実施初年度にし てゴミの量30パーセント削減というターゲットを上回 る成果を挙げた。

「市民の皆さんも実行したいとお考えだったので すが、結果がどうなるか見えなかったのですね」と 中田さんは語る。「参加してくださいと働きかける と、皆さん買い物が賢くなった。シャンプーなどボ トルごと買うのではなく、詰め替え用を求めるよう になりました。やればできますよと励まされ、頭を使 うようになったのです」。 中田さんは続ける。「横浜市民の皆さんは今ある 自分たちの生活の大切さを改めて感じ取ったので す。ゴミの分別収集は今では制度化されました。社 会を助けるのも、問題を解決するのも、つまるとこ ろ人なのです」。❖