JMEC、またの名を“ミニMBA”

by Zach Johnson
jmec日本の起業家を養成し、企業を手助けしているJMECが発足15周年を迎える。

別名「ミニMBA」とも呼ばれているJMEC――ジャパン マーケット エクスパンション コンペティションは、12の在日外国商工会議所と欧州ビジネス協会の後援を仰ぐ非営利団体である。JMECのスタッフ、後援者、卒業生による一連のインフォメーションセッションを皮切りに年一度のイベントが毎年9月前後にスタートする。

参加者が決まり、実際に動き始めるのが11月で、日本におけるビジネスの基本と、起業したばかりの新企業や多国籍企業が直面する難題をテーマに講義が始まる(土曜日開催)。「講義とワークショップは、日本市場に参入してビジネスプランを立てる上での実務に大きな力点を置いており、国内外のビジネス界で高い評価を受けている講師が担当します」。こう語るのはローラ・ロイさん。JMECのプログラムディレクターだ。「参加者はその後チームに分かれ、それぞれのチームにプログラムに参加した企業がひとつずつ割り当てられるのです」。

jmec-lecture指導者と会計コンサルタントの助言を受けながら、チームは1月にプロジェクトクライアント(日本市場向けのビジネスプランを必要とする企業や団体をJMECはこう呼ぶ)が日本で現実に直面している問題を取り上げ、これに焦点を合わせたビジネスプランの作成に取りかかるのだとロイさんは説明する。「プロジェクトクライアントは千差万別ですから、各々のチームはその企業特有の問題に取り組み、ニーズに合ったビジネスプランをテーラーメイドすることが求められるのです」。ちなみに、ビジネスプランではストラテジー、マーケティング、販売、財務、企画立案、人事、法務などを扱う。

ところでどんな人がこのミニMBAを求めているのだろうか?「JMEC参加者は、英語を話し日本で働き、ビジネススキルの向上、ビジネス人脈作りや、キャリアの向上、個人目標の達成に高い関心を持つ日本人や在日外国人です」とJMECのウェブサイトは謳っている。

第12期JMECに参加したサントシュ・サリさんは次のように説明してくれた。「JMECではとても中身の濃い体験をすることができました。意志決定を下す立場の企業トップ、経験豊かな顧問、様々な国から来た多様なチームメイトと交流できたし、チームの指導者からはやる気を鼓舞するコメントをもらい、私はすっかり変わりました。新たな自信が身につき、今はジェネラルマネージメント職を目指そうと思っています。予期せぬメリットもありました。親睦会に参加することで異業種との人脈を作るチャンスに恵まれ、プログラムを終えたときには日本のビジネスカルチャーに対する理解も深まりました」。


一方、プロジェクトクライアントについてはどうだろうか?


「プロジェクトクライアントは、日本国内外を拠点とし、日本市場向けのビジネスプランを必要とする企業や団体です。ニーズにフォーカスした、高品質でプロフェッショナルなビジネスプランを、外部コンサルタントに比べればわずかなコストで手に入れることができます」と同ウェブサイトは説明する。実際、ビジネスプランはその対象となる企業の数と同じだけあるのです、と前出のロイさんが補足してくれた。

jmec-13-winning-parasolsSKWイーストアジア社は第13期JMEC(2006年〜2007年)に参加した。このドイツの企業は製品であるパラソルや傘を日本で販売するにあたり、市場参入のストラテジーを作って欲しいとJMECチームに依頼した。チームは、ニーズに合わせてメディアを使おうというプランを提出し、これで製品の需要はすぐさま拡大したのだった。

SKWイーストアジア社顧問のゲオルグ・レア氏はこう語る。「JMECに参加したことは有益でしたし、私たちの期待をはるかに上回るものでした。当社を担当したチームはコンペティションで優勝しただけでなく、私たちもわくわくするようなビジネスプランを手に入れ、実行に移し始めたところです。日本市場への参入、あるいはシェア拡大のための優れたツールを利用したいと考えるあらゆる企業にJMECを勧めます」。

JMECは立ち上げ当初にも、ロイズ銀行(現在のロイズTSB銀行)と海外送金市場で成功を収めている。創業は1765年にさかのぼるイギリスの定評ある金融機関ロイズが、初の東京支店を開いたのは1974年のこと。1995年には国内と海外の送金に要する手数料の差をビジネスチャンスとして利用する準備が整ったのだが、どう取りかかればいいのか最初の一手を決めあぐねていた。

ロイズは日本にたったひとつしか支店がないのだが、長らく郵便局と国内の銀行に独占されていた送金市場に存在するビジネスチャンスをどう掴むか。これがJMECチームにロイズが持ちかけた課題である。JMECチームはこの難問への回答を考え出すべく、広範なマーケットリサーチと競争相手の分析を行い、ターゲットに据えたマーケットに向けて1万3000通近いアンケートを配った。


そしてチームは次のようなプランを練り上げた。顧客は自分の取引銀行のATMからロイズ東京に円貨を振り込む。ロイズ東京はこれを外貨に換金して、海外に送金する。顧客は日本全国に2万5000カ所以上あるATMを通して、ロイズのサービス(「Goロイズ」と名づけられた)にアクセスできる。Goロイズの専用電話に録音された為替レートを聞いて、その日に送金するかどうかを決めることもできる。これだけ便利なサービスなら顧客は喜んで2000円の送金手数料をGoロイズに支払うだろう…… プランの予想は見事に当たった。ロイズがこのプロジェクトを実施する費用も、JMECの参加費用も、送金手数料と外国為替からの収入で短期間のうちに回収できたのだ。


エンタープライズ・アイルランドはアイルランドの国内産業を発展させ、プロモートする政府関連機関である。その日本事務所は2005年、アイルランド製のファッション製品を日本市場で売り込むにあたり、ビジネスプランを立てる必要に迫られていた。JMECチームはサブセクターにチャンスありと見抜き、このセクターに向けたアイルランド製品の説得力溢れるビジネスケースをまとめるとともに、このチャンスを有効に生かすプランを練り上げた。


アイルランドのファッション産業は中国からの安い輸入品と競争しても勝ち目がなく、むしろ高品質でモダンな製品を輸出することに照準を合わせるべきだと素早く見抜いたチームは、オンラインサーベイをかけて中核になるマーケットセグメントを明らかにした。その結果浮上してきたのが、20代〜40代の働く独身女性と、55歳以上のアクティブな男女のシニア層だった。また、製品を展示して売り込むには、集中管理システムを敷くことが重要だと考えられ、チームは中心になるショールーム、ウェブサイト、様々なプロモーション活動を提案する。


そして、ある日本の代理店が強力なパートナーとして認められ、アイルランド企業が日本市場に進出する先導役になった。現在までに14のアイルランド企業が、このショールームをプロモーションおよびセールスツールとして利用している。

ところでJMECの卒業生が全員起業家になるわけではない。ジュンは10年近くサプライチェーンマネジメント業界で働いた経歴の持ち主で、JMECに引き寄せられるように参加した。彼はJMECが、MBAでも核になっている内容をもれなく短期間にカバーしていること、自分の実務経験を生かして実在する企業のビジネスプランを立てるチャンスを与えてくれることを知る。「ここが提供するコースや実務体験に加えて、受講期間の点でもJMECは私にとって理想的でした」とジュンは語る。


JMECの同期生が経営する企業に採用されたのはそれから一年後のことだった。応募者のなかで、ジュンはJMECを体験したゆえに際立った存在だったのだ。「JMECに参加していなかったら、今のキャリアはないでしょう。だからこそJMECにはありがとうと言いたいですね!」 ❖


The JMEC15 winning team (from left): Yoshiko Sugita, Deborah Murao, Daisuke Fujisawa, Dan Herbert, Ru Sun (not pictured: Jun Tezuka)

The JMEC15 winning team (from left): Yoshiko Sugita, Deborah Murao, Daisuke Fujisawa, Dan Herbert, Ru Sun (not pictured: Jun Tezuka)

第16期JMECは、2009年の9月〜10月にかけてインフォメーションセッションをスタートする。

参加者の締め切りは10月23日、プロジェクトクライアントの締め切りは11月27日である。

JMECプログラムの詳細はウェブサイト www.jmec.gr.jp をご覧になるか、
プログラムディレクターのローラ・ロイ info@jmec.gr.jp までご連絡ください。

JMEC NUMBERS
Average number each year:
Participants: 49
Age: 31
Age Range: 23-48
Percentage of male-female: 45%, 55%
Countries Represented so far: 45