クライシスマネジメント:基本に戻れ

by Zach Johnson

chief-john 雇用主にとっても従業員にとっても、ビジネスの基本は変わらない。

氷の短剣が鼻先に向けられている。進路が見えない。突風がさらに方向感覚を奪う。足場が崩れる。地吹雪が吹き荒れる。一緒だったはずの仲間の姿はどこにも見あたらない。見えるものといえば目をくらませるまっ白な雪だけ。感じるのは身を切るような寒さのみだ。クライシス!どうすればいい?

まずは落ち着いて。山が動くわけではない。地面はしっかり足元にあるし、上には天空が広がっている。進むべき道だってちゃんとある。見えないだけだ。一歩間違えば足をすくわれかねない雪に覆われているかもしれないし、足場は氷でぐらぐらで、地滑りで何箇所も寸断されてしまったかもしれないが、道はちゃんとある。ただ路面が変わってしまっただけなのだ。だから一層の用心は必要だ。ハイキングシューズではなく、アイゼン付きの靴とアイスピックが必要だ。それでも道はそこにある。

stomy-sky-mt-fuji-tori-gate3月、六本木にあるレストラン、<スージーズ>でのこと。Japan Market Expansion Competitionの協賛で開かれた満員の会合の席上、アンソニー・ウィロビーとロジャー・ブルッキンが語ったテーマは、ブランドの構築と強化、テリトリーの拡大と維持、そして社員の育成とやる気の植えつけ、またその結果として、ビジネスの運営という核心部分への顧客の引き戻しであった。どれも従来からビジネスの基本原則として認められているテーマで、二人はこれを改めて採り上げたのだった。

「たった今、嵐でズタズタにされた吹きさらしの道をなんとか切り抜け、ようやく設営したビバークという一時的な天国から、明日の旅をじっくり考えなければならない。あなたがそんな状況にあるとしても、忘れないでください。いずれ地吹雪は止むし、太陽は輝き、夏は来るのだということを」とウィロビーは語った。

その一方で、今は誤った楽天主義に浸るときではないとブルッキンが釘を刺す。「厳しい決断を下さねばなりません。旅を続けなければなりません。春が来る前にもっと激しい嵐の日々があるとしても、です。私たちには日の光が満ちあふれるときまで旅を続ける力がある。せっかくの力に自分で足かせをかけてはならないのです」。

経営のベテラン二人が、未来の、そして現役の起業家を前にして語った内容をまとめておこう。

    私たちは皆なにかを売る仕事に携わっている。もっとも大切な原則は、製品なりサービスを提供して、提供した相手から報酬を与えられるというその行為を信頼することである。通常、報酬ははお金の形で与えられる。私たちはビジネスの相手を常に満足させ、理想を言えば、注文の量が増えていくように仕向ける必要がある。ここで大切なのは買い手に対するアフターケアだ。
    製品であれサービスであれ、他社より抜きん出て優れた、買い手にとって真に魅力的なものを作ること。与えられた仕事をこなすのではない。相手にとって魅力的に、しかも気持ちをこめて仕事に当たる。
    競合相手はだれなのかを知り、ゲームのルールを直感的に理解すること。
    セールスマンに報酬だけでなく、常に前向きな気持ちにさせることで努力に報いる、そういう販売システムをきっちりと構築し、維持すること。
    組織内に蓄えた知恵と知識を充分に引き出し、活用する。

ウィロビーとブルッキンが提唱する“キャンプファイヤー”コンセプトは、経験とパーソナリティという2種類のまったく異なるスキルを使う。まずはやる気を引き出すこと。次に曇りのない目で自分たちのビジネスを見直すこと。このふたつが組み合わさると大きな力が生まれ、また余計なものがそぎ落とされて、会社はなにをするべきなのかという基本的な核心部分だけが残る。そうすることで、参加グループは自分の立ち位置を理解する手がかりを掴めるのである。「“キャンプファイヤー”は正午から正午までの丸一日、職場から離れて行うセッションです。映像や比喩を使ったり、絵や地図を描いたりしながら、参加者に自分たちの仕事について語るように促します。ビジネストークに陥らないようにしながらね」とウィロビーは説明する。

do-you-know-your-territoryウィロビーはパプアニューギニアとケニアの数々の部族から、彼らが自分たちのテリトリーをわきまえていること、存在の基本を理解していること、余分なタスクを基本より優先させないことを学んだという。「複雑さが障害になるのです。それに複雑なものはいずれ滅びるのです」。

ウィロビーは“テリトリー・マッピング”を通して参加者に刺激を与える。視覚から入り、参加者同士が対立することのない、むしろ双方向的に作用する非常に興味深いプロセスだ。“テリトリー・マッピング”はあらゆる種類の文化的、階層的、言語的バリアを乗り越え、参加者はまったく新しい観点から、自分のビジネスとそれが営まれる環境をどう理解しているかを見られるようになる。「最近、このプロセスを英国のインディペンデント紙が取り上げました。『文明を突き破り、自分がどこにいるのか、どこに向かっていくのかを、新たな明快さをもってわからせてくれる』プロセスだと紹介されました」とウィロビーは語る。

ウィロビーが現代の企業組織における簡潔さの重要性を力説する一方で、ブルッキンは戦略を編み出す40年の経験を活かして、企業経営の核である基本要素を明示し、そこにずばりと切り込んでいく。そうすることで、景気の動向に左右されない、各企業が持っている潜在能力を企業自身で認識できるように導くのである。

40年以上にもわたりグローバルマーケティングの現場に身を置いた経験から、ブルッキンは現実社会で物事をうまく運ぶ術を学んだという。“キャンプファイヤー”でブルッキンは、彼の持ち駒を披露する。これまで4つの大陸で、様々な状況の中から開発され、実際に成功をもたらした、非常に効果的で実践的なツールとプロセスがブルッキンにより披露されるのだ。近年の経済状況は、50年にわたって学術界で取りざたされてきたややこしい議論が正しかったのか疑問を投げかけ、余計なものをそぎ落として基本に立ち返ろうという自身の理論が正しいことを立証していると、ブルッキンは語る。


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「“テリトリー・マップ”は、参加者が成功に繋がるチャンス、問題点、障害、さらには成功に必要なリソース、知識、人材をどうように認識しているかをはっきり示してくれます。こうして得た洞察をまとめあげ、優れたビジネス手法として認められている一般的な基本要素を取り入れたうえで、それを各企業固有のニーズに合わせ、“コーポレート・アンド・マーケティング・ストラテジー”を開発します。すなわち各企業が持つ知恵を活かし、カスタマーを中心に据え、コスト効率に優れたリザルトをもたらす行動を従業員に喚起するストラテジーを開発するのです」。ブルッキンは国際的なマーケティング戦略コンサルタントとして知られる。ヨーロッパ、アフリカ、アジアのユニリーバに30年近く勤務し、アジア地区担当マーケティングサービス担当ディレクターおよびユニリーバ・ジャパン株式会社の取締役を務めた。本人曰く、自分の役割は地域マーケティングにおける社内のカリスマ的存在に変わっていったという。実行可能でかつ単純という彼のビジョンに基づき、同社のアジア地域に効率性の高いマーケティング・ネットワークを構築した。

アフリカで幼少期を過ごしたウィロビーは英国とアメリカで教育を受け、1973年、22歳のときにシベリア横断急行の片道切符を手に、刺激と冒険とチャンスを求め、英国を離れて日本にやってきた。以来25年、起業精神に溢れた企業を多数支援してきている。

話し上手なウィロビーは、いろいろな逸話を聴衆に語る。「パプアニューギニアに探検に行ったとき私たちはワインばかり24本持っているのに食べ物はゼロだったのですが、これに文句を言う仲間からあるヒントをもらいました。中国の標高7500メートルのムスターグァタ峰に登った際にも別の教訓を得ました。このふたつの経験から、私は日本で初めてのアウトドア活動を通してリーダーを育成する会社を設立しました。社名は“I Will Not Complain-私は文句を言わない”に決めました」。

1992年には北京支店と万里の長城研修センターを開設。IWNC社は体験トレーニングおよび人材育成でアジア有数の企業として知られる。(詳しくはwww.iwnc.comを参照。)

この10年にわたり、ウィロビーは、視覚的にも感性の上でも明瞭に理解できる要素をビジネスストラテジーに持ちこむプロセスとして、“テリトリー・マッピング”の開発に携わっている。また、ビジネスマンをアフリカに連れて行き、先住部族と過ごさせて意思決定と戦略に対する理解を深めさせることもしている。

IWNC社はアジアとヨーロッパで広く事業を展開し、あらゆる業種・規模の企業に、顧客にフォーカスした戦略的マーケティングビジョンを提供している。「当社のネットワークには、最前線で活躍するクリエイティブ関連、メディア関連、パッケージング、ヒューマンリソース、市場調査、異文化社会心理学療法の専門家が揃っています。最先端のマーケティングツールが情報を生み出します。その情報に基づいて詳細かつ実行可能なマーケティング戦略が開発できるのです」とウィロビーはWIFMに説明してくれた。❖